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大阪高等裁判所 昭和24年(を)2595号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

所論は本件重炭酸普達については原判决言渡後價格の統制が徹廃せられ、犯罪後の法律により刑の廃止された場合に該當するので免訴の判决を言渡さるべきであると主張するのである。しかし、刑法第六條刑訴法第三三七條第二號は何等の例外も許さない絶對的な規定ではなく、同じ刑の廃止又は變更を生ずる場合であつても、その中には(一)國家の法律的見解の變更に伴い、從來のような處罰の必要を認めないに至つた結果なる場合又は後法を以て明示的に從來の刑を廃止變更する場合と(二)最初から予定された實施期限の經過により法規の中に發展的解消を遂げる場合とがあり、前者の場合が普通であつて、これが刑法第六條刑訴法第三三七條第二號の予想せるものにあたるので、この場合は刑の廃止によつて舊刑罰を適用し得ないことは法令上明白であると共に實體的にも舊法により處斷すべきでないという根據は充分認められる。しかし、後者の場合は之と趣を異にし、當初より一定期間内(必ずしも明文を以てその期間を限定することを要せず、法規全體の趣旨から一定の時を限定するも差支えない)における特定行爲の制限禁止を目的とし、其違反に對する制裁を科するのが眼目であるからその實施期間の經過後でも、いやしくも期間中になされた違反行爲なる限り之に對してはその制裁の適用を否定すべき何等の理由をも見出し得ないのであつて、これが、すなわち前述の例外であり、いわゆる限時法の問題なのである。限時法とは一定の期間内に行われた犯罪に限り絶對的に之を處罰する刑罰法規を云い換言すれば、たとえその法規が効力を失つた後においてもなお、處罰を要請するものであり、これが限時法なるものの個有的性格であるが、ある法規が限時法なりや否やはその立法精神にかんがみ、法そのものの實質に則して决せられるのである。所論告示は物價統制令(以下本令と云う)の委任に基き統制額を指定して本令の内容を補充完成しそれ自身も法令の一部をなすものであるから、本令の本質精神を檢討してそれが果して限時法であるか否かを决定しなければならないのである。もともと、經濟統制法令は社會の必要に應じ急速に實施の要あるもの多きと共に、社會情勢。經濟事情の變動に伴い極めて頻繁に改廃せられる可能性をもち、予め短い施行期間を限定又は予想して實施し、その期間の經過によつて効力を失う建前におかれているものが多いのである。戰時中の國家總動員法に基く價格等統制令を中心とする物價の統制は終戰と共に一應その『戰爭の完遂』と云う目的を失い、そのことが、戰時中の官僚統制に對する反感や政府の威信の失墜と云うようなその他の諸原因とも關連して戰後の經濟秩序の混亂をもたらし、闇市場の出現を許し、物價の統制は全く無力化し一般大衆は正にインフレの猛威の前にさらされるに至つたのである。もとより經濟統制は一般大衆に對し、その生活に破壞的な結果を生ぜしめるインフレの增大を防止せんとする非常措置であつて、統制があるよりもない方が一般大衆にとつてよりよい結果が得られることになればその時々に應じ統制を緩和し、又は撤廃さるべく、終局的には自由經濟に席を讓らなければならないのであるが、戰後のわが國の窮乏せる經濟事情は直ちに自由經濟に復歸することを許さず、戰時中とはその目的方式を異にする新たな統制を要求し、當時の經濟的危機の克服と經濟秩序の再建のために經濟緊急措置の一環として生れたのがこの物價統制令であつて、その第一條に『終戰後の事態に對處し物價の安定を確保し、社會經濟秩序を〓持し國民生活の安定を圖るを目的とする』と明記し、物價の統制は、この終戰後の非常事態を突破するため、一時的な非常措置であることを明らかにしているのである。この本令制定の經過とその本質精神に照らすときは本令にまさしく限時法なのである。所論は要するにこの限時法の個有的性格を理解せず、刑法第六條刑事訴松法第三三七條第二號は何等の例外をも許さないと云う見解に立つものであつて、採用することはできない。

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